検査依頼の種類
1)診断免疫, 2)臨床化学, 3)診断血液, 4)分子遺伝, 5)質量分析, 6)電気泳動, 7)潜在性結核, 8)微生物, 9)病理検査
検査依頼書の記入要領
依頼項目に適切な中央検査本部のプログラムを利用し、必要な内容を必ずご記入ください。
- 検査項目 :電算プログラムに検査項目を登録
- 診療科 :機関名、診療科、担当医師
- 検体情報 :氏名、性別、年齢、妊娠情報(女性)、受付番号など
- 検体 :検体の種類、部位(細胞、組織)、採取日時、依頼日など
検体採取の方法
- 検体 :各検体は中央検査本部の検査項目に適した方法で採取してください。
- 容器 :容器に貼付されたラベルに氏名、年齢、性別、受付番号を必ずご記入ください。
- 検体数 :同一の受検者から1種類以上の検体を依頼する場合は、ラベルにそれぞれ検体名と検査名をご記入ください。
検体の提出と輸送方法
検体の提出及び輸送過程において特別な注意が必要な検体(例:冷蔵輸送、即時輸送)は、中央検査本部「検査案内ガイドブック」の検査項目別ガイドラインに従ってください。
検体は各支部の受託担当者を通して検体輸送業者の担当スタッフに提出してください。 提出された検体は直ちに回収され、翌日に中央検査本部に輸送、検査が行われます。
追加検査の依頼
追加検査を依頼する場合は、中央検査本部に連絡して可能か否かを必ずご確認ください。
1日が所要される検査の場合、午後5時までに受付された検査は、翌日の正午まで報告が完了されます。
- スケジュール検査項目は、検査案内の検査項目別検査日及び所要日数に従って検査が行われます。
- 検体の汚染が激しかったり、変性された場合は検査を行うことができません。この場合は検体の再採取をお願いしています。
- 検体量が不足している場合、再検査や追加検査は不可能です。
- 緊急を要する場合やその他の疑問点は中央検査本部にお問い合わせください。
検査結果の報告
検査結果は依頼した支部から電算システムを通してリアルタイムで照会することができます。 結果シートが必要な場合は協会プログラムの電算システムを通してプリントアウトすることができ,
結果シートの様式は協会の結果シート専用様式です。
採血ガイドライン
採血の準備
採血時に必要な道具 | 駆血帯の使い方 |
---|---|
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採血方法
- 患者確認
- 空腹状態の確認
- 患者の腕をテーブルの上(心臓と同じ高さ)に乗せ、穿刺する部位の上部に駆血帯を巻き付けます。
- アルコール綿で採血部位を消毒し、アルコールを乾かします。(アルコールが乾かないと検体溶血の原因になりますのでご注意ください。)
- 注射針を15°の角度で肌に穿刺します。
- 注射器
- プランジャーをゆっくり引いて採血します。急いで引くと溶血を引き起こすことがあります。
- 真空採血管ほどの充分な量を採血してください。
- 真空採血管
- ホルダーを固定させ、採血管を押し込みます。採血が終ったら慎重に取り外します。
- 連続で採血する場合、ホルダーから最初の採血チューブを取り外した後、2本目のチューブをホルダーに差し込んでください。
- 採血管が差し込まれている間は絶対に血管から針を抜いてはいけません。
- 注射器
- 採血が始まると駆血帯を外します。
- 針を抜いて、採血部位を圧迫します。
- 過度な出血(5分以上)や血清容器の血液が凝固されない場合は医師に知らせて必要な措置を取ってください。
- 使用済みの注射針は必ず注射針専用回収ボックスに捨ててください。
- 抗凝固剤と血液がよく混ざるようにすぐ反転させてください。
採血管名 | 色 | 検査 | ミキシング | 添加剤 |
---|---|---|---|---|
Sodium Citrate | PT/aPTT、特殊凝固検査、凝固因子 | 4回 | 3.2% Sodium Citrate | |
Plain | 血液型、薬物 | 5回 | Clot activator | |
SST | 生化学、血清学 | 6回 | Clot activatior & Acrylic gel | |
PST | 救急生化学 | 8回 | Lithium heparin & gel | |
Heparin | 血液ガス | 8回 | Heparin | |
EDTA | 血液検査 | 8回 | Spray-dried K2 EDTA | |
Glucose | グルコース検査 | 8回 | Sodium Flouride & Na2 EDTA | |
NK Vue | NK細胞活性度検査 | 10回 | NK Cell activator | |
STANDARD ETB-feron |
潜在性結核検査 | 10回 | CFP-10, ESAT-6, TB7.7 |
採血順番
- 01
NK Cell activator
(1mL) - 02
S/C
(2.7mL) - 03
Plain
順番関係なし
(6mL) - 04
SST
(5mL) - 05
Heparin
順番関係なし
(10mL) - 06
PST
(4.5mL) - 07
EDTA
(3mL) - 08
CFP-10, ESAT-6,TB7.7
灰色→赤→紫
(各 1mL)
分離及び保管
- 血液が真空採血管(SST)の壁面に塗布されたClot activatorによって充分凝固できるように軽くミキシングした後、30分から1時間程度常温に立てて置きます。
- 血清が分離される前の全血状態で冷蔵保管(4℃)すると、1時間に約0.2mmol/L程度の血清カリウムが増加するため、血清が分離するまでは必ず常温(15-25℃)で保管してください。
- 凝固された血液状態で2時間以内に遠心分離機を使って1300-2000RCF(g)で10分間血清を分離します。
- 遠心分離機が用意できない場合は、30分から1時間程度常温で凝固させた後、上層に分離された血清を迅速に分離してください。
- 分離後は冷蔵保管してご依頼ください。
分子遺伝検査
- APOE遺伝子検査の検体はEDTAチューブで採取したものを使用し、真空チューブに血液2mLを採血した後、すぐチューブを上下に8-10回程度傾けてEDTAと血液がよく混ざるようにして部分凝固を防ぎます。
- HPV関連検査は必ず検査項目に該当する専用容器をご使用ください。
- 肝炎ウイルス関連検査は抗凝固剤のないSSTチューブの使用が原則となっています。
- HCV RNA検査の場合、RNAの分解が早いため、血液を採取した当日にご依頼ください。
- RNAウイルス検査を依頼した検体のうち、溶血した検体は検査結果が不安定であるためご注意ください。
- 遺伝性疾患やその他慎重を要する検査は必ず臨床所見や依頼目的を遺伝子検査依頼書にご記入いただき、遺伝子検査同意書を同封してお送りください。
- 検体保管及び輸送は冷蔵状態で行います。
血液診断検査
- 採血後3時間以内に末梢血塗抹標本を制作してください。
- スライド標本の右側の濃い部分に鉛筆で受検者の情報(依頼先、受検者氏名、性別、年齢など)をご記入ください。
- 血液塗抹標本を充分乾燥させ、スライドケースに入れてCBC検体と同封してお送りください。
- 清潔なスライドガラスの右端から約1cm離れた所に血液を一滴落とします。
- もう一枚のスライドガラスを血液の滴の上に30-45°の角度で接触させます。
- 血液が接触させたスライドガラスの端に沿って広がると、すぐ一定の速度と角度で塗抹します。
- 塗抹の長さは約3-4㎝が適切で、迅速に乾燥させます。(乾燥が遅れると細胞変形の恐れがあります。)
よくある不適切な末梢血塗抹標本
- 血液の肉眼確認
- スライドガラスに触れたスプレッダースライド(spreader slide)の接触面が欠けているか粗い場合
- 塗抹の速度が不規則な場合
- スプレッダースライドの面に血液が充分広がっていない場合
- スライドガラスに落とした血液の量が足りない場合
- 血液がスライドガラスの幅に合わせて広がっていない場合
- スライドガラスが清潔でないか、油っぽい場合(血液内の脂質成分が多い場合)
- スライドガラスとスプレッダースライドの間の圧力が一定ではない場合
- 血液を落としてから塗抹までの時間が長い場合
- 不適切な標本の血球形態
- 乾燥遅延、またはスライド標本表面の湿気によるアーチファクト
- 問題点:赤血球形態の観察が不可
- 解決方法:塗抹後、直ちに乾燥させ、スライド標本の表面が湿気に晒されないようにします。
- ホルマリンガスによるアーチファクト
- 問題点:ライト染色後、スライド標本が濁って青く変化
- 解決方法:スライド標本をビニール袋の中に入れて露出を最小限にし、組織検体とは分離保管します。
- 乾燥遅延、またはスライド標本表面の湿気によるアーチファクト
潜在性結核検査
- 採血チューブは2-25℃の温度で保管し、採血前に15-25℃に出して常温化させてください。
- 採血の順番を必ずお守りください。(順番が変わると汚染によって正確な結果を得ることができません。)
- Nil(Gray) → TB Ag(Red) → Mitogen(Purple) - 採血量が足りない場合、細胞量が確保できないため結果に変動がある場合がありますので、採血量は必ずお守りください。
- 最適な反応のため、冷たい状態での採血はお控えください。
- 採血直後、気泡が生じないように10回シェイクしてから15-25℃で保管してください。
- 採血後、16時間以内にインキュベーションを始めてください。
- インキュベーターに入れるまで採血されたチューブは必ず15-25℃に維持してください。
- 培養温度:37±1℃(チューブは立てて培養します。)
- 培養時間:16-24時間
- 培養後すぐに遠心分離ができない場合は、2-25℃で最長1日間保管することができます。
- 遠心分離した血漿の場合、2-8℃で7日間保管することができます。
- 培養前の全血検体の冷蔵、もしくは冷凍保管はお控えください。
- 培養後15分間、RCF 2200~2300gの条件下で遠心分離してください。
NK細胞の活性度検査
- 冷蔵保管したNK専用チューブは取り出してすぐ使います。
- 採血チューブに表示された黒い線まで血液を1mL採血します。
- 数種類のチューブを連続で使う場合は、NK専用チューブを最初に使って採血します。
- 注射器で採血して分注する場合、必ずNK専用チューブのキャップを開けて定量を分注します。
- 採血後、10回反転させます。(ローラーの使用はお控えください。)
- 採血後、直ちに培養を始めてください。採血後30分までは活性度が維持されますが、その後時間の経過によって数値に影響がでることがあり、最長1時間以内には培養を開始することを推奨します。
- 培養温度:37±1℃ (チューブは立てて培養します。)
- 培養時間:20-24時間
- 培養が終わったら上層液と血球が混じらないように注意し、上層液をプレーンチューブに移します。
- 上層に分離された血漿は2-8℃でご依頼ください。
微生物検査
腸内細菌検査
- 綿棒に異常がないことを確認し、汚染されないように気を付けて取り出します。
- 片手で肛門部位を露出させ、もう片方の手で綿棒を入れてください。
- 約2.5~4㎝程度入れて、直腸の壁に向かって回しながらゆっくり抜いてください。
- 綿棒に糞便が充分付いていることを確認してから綿棒を輸送用培地に入れ、キャップが開かないようにしっかり閉めてください。
- 追加のコレラ検査がある場合は必ず綿棒2本を全部採取してください。
- 検体保管及び輸送は冷蔵状態で行ってください。
感染管理培養検査
- 内視鏡スコープのエア・ウォーター及び吸引シリンダーを滅菌蒸留水を付けた輸送用培地で2~3回スワブして検体を収集してください。
水の培養検査
- 滅菌容器(conical tube)に無菌的に採取して5cc以上入れてください。
組織・細胞病理検査
組織病理検体の取り扱い方
- 検体の固定
- 固定液は10%中性ホルマリンで、組織の10-20倍程度の量を使って組織が完全に浸かるようにし、常温で固定します。
- ホルマリンを使用する目的は検体の保存性に優れ、組織の自己融解(autolysis)と乾燥を防ぐためです。
- ホルマリン以外の生理食塩水やアルコールなどの溶液は絶対にご使用にならないでください。
- 固定液がない場合、生理食塩水に浸したガーゼで組織を包み、冷蔵保管します。そしてできる限り早く固定液に入れ替えてください。
- 採取部位が異なる場合は別の容器に入れて固定してください。
- 小さな生検組織はろ紙に乗せて組織の有無と組織の数を確認します。
- 組織を入れる容器は口が広いものを使用し、固定液が漏れないように密封します。
- 受検者の検体が入れ替わることのないようご注意ください。
- 検査依頼書の作成
- 患者の氏名、性別、生年月日、カルテ番号、依頼機関名をご確認ください。
- 採取部位、採取方法、臨床所見を英語で正確にご記入ください。
例) Stomach, antrum, biopsy; Erosive lesion, R/O EGC Colon, ascending, snare polypectomy; Polyp, R/O Polypoid carcinoma - GI tract(gastrointestinal tract)の場合、biopsy, forceps polypectomyではresection marginに対する評価が不可能ですので、病理診断書に言及しません。
- snare polypectomy、endoscopic mucosal resectionの場合、resection marginを評価して病理診断書に記入しています。
- その他の施術方法においてはresection marginの評価が必要な場合、依頼書に別途表記してください。
- 伝染性疾患、過去の病歴及び特記事項をご記入ください。
- 依頼書に肉眼で確認された組織の数をご記入ください。
- 救急の場合、検体容器と依頼書に救急の事由と「救急」と分かりやすく表記します。
細胞病理検査
- 細胞検査用の検体
- 検体採取の前日は膣内の治療や避妊薬などの使用はお控えください。検体採取前に外傷の治療や生検などを行った場合、血液がスライド標本に塗抹されて判読が難しくなるのでお控えください。
- 検体はサイトブラシを用いて充分な量を採取してください。
- 検体は採取してからスライドガラスに薄く均一に塗抹し、細胞変性を防ぐため95%エタノール、またはサイトスプレーなどのコーテイング固定液(coating fixation)で固定します。
- 検体容器に受検者の氏名、番号、依頼先などの情報を必ずご記入ください。
- 検体の採取後、検体容器のキャップをしっかり閉めて検体の流失を防ぎます。
- 一般子宮膣塗抹検査用の検体
- 一般子宮膣塗抹検査の固定
- 塗抹されたスライド標本は直ちに95%エタノールに漬けて少なくとも30分以上固定します。(メタノールは使用禁止)
- 充分固定されたスライド標本は完全に乾燥させてから輸送用PAPボックスに入れます。(塗抹されたスライド標本の場合、湿気やホルマリン成分によって細胞変性を引き起こすことがあります。)
- 輸送用PAPボックスの中に除湿剤を入れて残った湿気を取り除くことを推奨します。
- 毎日業務終了後、使用した95%エタノールは廃棄して、固定用容器はきれいに洗浄して乾燥させます。
- 検査開始前に乾燥させた固定用容器に新鮮な95%エタノールをスライドガラスが充分浸かる量を注いで使用します。
- 検査中に95%エタノールが揮発しないように固定用容器のキャップを閉めて使用します。
- 輸送用PAPはジッパーバッグに入れて密封した後、揺れないように袋に固定させて依頼します。
- 土曜勤務者及び担当者の変更がある場合は上記の事項を必ず引き継いでください。
- 一般子宮膣塗抹検査の固定
- 液状化細胞検査用の検体
- 子宮頸部液状化細胞検査
- 潤滑剤を付けず、子宮鏡を使って子宮頸部の細胞をブラシで採取します。
- ブラシを保存液容器に入れて2-3回充分揺らした後、使用したブラシは廃棄します。
- 子宮頸部液状化細胞検査
- 一般子宮膣塗抹検査の固定
固定良好
固定不良
- 液状化細胞検査の処理方法
- 婦人科の検体
- 各ブラシで採取した検体をPreservCyt保存液の瓶に入れて、底面にブラシが曲がって広がるように10回以上押しながら充分回転させて検体をすべて振り落とした後、ブラシは廃棄してください。
(ただし、三角ブラシのブラシの部分は容器の中に入れないでください。)
- 各ブラシで採取した検体をPreservCyt保存液の瓶に入れて、底面にブラシが曲がって広がるように10回以上押しながら充分回転させて検体をすべて振り落とした後、ブラシは廃棄してください。
- 尿(Urine)及び喀痰(Sputum)
- 液状輸送用容器に新鮮な検体50mlを入れます。
- 穿刺吸引法(FNA)
- 採取した検体を液状輸送用容器に直接入れます。
吸引後、シリンジニードルを分離し、チューブの中に入っている保存液(CytoLyt®solution)をシリンジの中に吸引してから再度チューブの中に入れます。
ニードルをシリンジに再度取り付け、保存液容器の壁面に密着させて優しく検体を入れます。保存溶液を再度吸引して入れる過程をくり返します。
- 婦人科の検体
医療従事者の保護のための注意事項
- 鋭利な物を取り扱う際は怪我をしないように注意し、廃棄する時は頑丈な容器に入れて他の人が感染しないようにします。
- 注射針を曲げたり、折ったり、再度キャップを付けるなどの行為は禁物で、使用後は必ず注射針回収ボックスに入れます。
- 全検体はHIV、B型、またはC型肝炎ウイルスなど、血液で伝播される病原体を持つと見なして慎重に取り扱い、
検体が外部に漏れないようにキャップがぴったりと合う容器を使用します。 - HIV検査を依頼する場合、良性と判定されたり、疑いのある検体は回収・受付時に破損したり漏れないように密封包装します。
刺された場合 |
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付いた場合 |
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こぼした場合 |
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目に入った場合 |
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傷がある場合 |
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